モノづくり・品質評価の知識

ULマーク付きシリアル銘版とは?種類と工場監査での確認ポイント【初心者向け解説】

製品に貼られている小さなラベル「シリアル銘版」。
その中に「ULマーク」が印字されているものを見たことはありませんか?

このULマークは、アメリカの安全規格に基づく認証マークで、製品の信頼性や安全性を証明するものです。
私自身、前職で会社として初めてUL規格を取得するプロジェクトに関わり、申請用ドキュメントの作成を専任で担当しました。
この記事では、その実務経験をもとに、「ULマーク付きシリアル銘版」の種類や、工場監査での確認ポイントをわかりやすく解説します。
朝礼スピーチや技術者教育の資料としても活用できます。

UL規格とは?

UL規格とは、アメリカのUnderwriters Laboratories Inc.(UL:アンダーライターズ・ラボラトリーズ)が定める安全基準です。
主に電気製品や機械、材料などを対象とし、「製品が安全に使用できるか」を検証するための認証制度です。

アメリカでは法律で義務化されていないものの、公共機関や大手企業が調達条件にUL認証を求めるケースが多く、実質的な国際基準となっています。

日本企業でも、アメリカ向け製品を製造・輸出する場合は、UL認証の取得が求められることが一般的です。

UL認証マークの3種類と意味

ULマークには複数の種類があり、用途や認証範囲によって異なります。
ここでは、代表的な3つのマークを解説します。

① リスティング認証マーク(UL Listed)

対象:最終製品

意味:UL安全規格試験に合格した製品に付けられるマーク

特徴:製品本体または銘板ラベルに印字される

UL Listedマークが付いている製品は、完成品として安全性がULにより直接認められていることを示します。
家庭用電化製品や産業用機器など、エンドユーザーが使用する完成品に多く見られます。

② コンポーネント・レコグニション認証マーク(UL Recognized)

対象:部品・材料

意味:単体では機能しない部品に対して付与される認証マーク

対象例:プラスチック、プリント基板、電線、コネクタなど

注意点:「Conditions of Acceptability(使用許可条件)」を満たして使用する必要がある

これは最終製品ではなく、部品レベルでの安全性を保証するマークです。
製品に組み込む際は、定められた条件を守る必要があり、設計段階での理解が不可欠です。

③ クラシフィケーション認証マーク(UL Classified)

対象:特定の使用条件下で評価された製品

意味:特定条件下での安全性・耐久性を評価済みであることを示す

このマークは、医療機器・防火材料・化学製品など、限定的な環境や用途で安全性を証明する製品に付与されます。

工場監査でのシリアル銘版確認ポイント

UL認証を取得した製品は、出荷前だけでなく、定期的にULによる工場監査(Follow-Up Service)を受けます。
この際、シリアル銘版の材料・印刷方法・製造元について厳しくチェックされます。

認証種別 銘版の要件 工場監査での確認内容
リスティング認証品 UL認定メーカー(ALSプログラム)で製造された銘版が推奨 ラベル材料・印刷方法の確認あり
コンポーネント認証品 内作可能。UL認定メーカー製でなくても可 ラベル材料・印刷方法の確認なし
クラシフィケーション認証品 UL認定メーカー製の銘版が必要 材料・印刷方法の確認あり

つまり、リスティング・クラシフィケーション認証品は工場監査の対象となり、
レコグニション認証品は部品扱いのため監査対象外となります。

設計・製造段階でこの違いを理解しておくことが重要です。

ULマーク付き銘版がもたらす信頼性

UL認証を受けたシリアル銘版を使うことで、次のような効果があります。

製品の国際的な信頼性向上

工場監査を通じた品質管理体制の強化

顧客からの信頼確保による取引機会の拡大

日本国内で販売する際には必須ではありませんが、海外ではULマークが「安全性の証明」として評価されます。

まとめ|ULマーク付きシリアル銘版は安全と信頼の証

ULマーク付きシリアル銘版は、

リスティング認証(最終製品)

レコグニション認証(部品)

クラシフィケーション認証(特定条件製品)

の3種類に分かれ、認証種別によって工場監査での確認項目が異なります。

UL認証を理解し、製造プロセスに適切に反映させることは、
製品の品質と信頼を世界レベルで保証する大切なステップです。

ものづくりに携わる方は、UL規格や銘版の取り扱いを正しく理解し、
国際基準を満たす製品づくりを意識してみてください。

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