朝礼スピーチのネタ集

鉄くずリサイクルの流れとメリット|省エネ・循環型社会への貢献

前職で機構設計を担当していた際、試作品を製作する過程で、板金の切れ端や金属の塊など多くの鉄くずが発生していました。
一時的に保管しても、半年から1年も経つと倉庫がいっぱいになり、最終的には産業廃棄物として処分業者に引き取ってもらうのが一般的でした。

しかし後から調べてみると、鉄くずの多くは再利用可能な「資源」であり、リサイクルによってエネルギー削減やCO₂削減に大きく貢献できることを知りました。
この記事では、日本の金属リサイクルの仕組みと、鉄くずが再び資源として生まれ変わるまでの流れ、そしてそのメリットを紹介します。

日本の金属リサイクルの現状

日本では、法制度に基づいて金属リサイクルが体系的に進められています。代表的なものとして、次の3つが挙げられます。

1.家電リサイクル法:エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などから金属やプラスチックを回収

2.資源有効利用促進法:パソコン、自動車用バッテリーなどリユース可能な資源を再利用

3.自動車リサイクル法:自動車の解体・再資源化を義務化し、鉄や銅などを再利用

こうした制度によって、国内で回収された鉄くずの約9割以上が再利用されるまでになっています。
特に製鉄業界では「電炉」と呼ばれる設備を使い、鉄くずを溶かして再び製品の原料として活用するケースが増えています。

鉄くずリサイクルの流れ

鉄くずが再び製品として生まれ変わるまでの一般的な流れは次の通りです。

1.排出
 工場や建設現場、家庭などから鉄くずが発生。ネジ、鉄板、配管など多様な形があります。

2.収集・運搬
 専門の回収業者がトラックなどで集荷。大規模な工場では定期契約を結ぶこともあります。

3.分別・加工
 磁力やセンサーを用いて、鉄・アルミ・銅などを自動で選別。圧縮・破砕して輸送しやすい形に加工されます。

4.製鉄所へ搬入
 電気炉で鉄くずを溶解し、再び鉄鋼製品の原料へ。建材・家電・自動車部品などに生まれ変わります。

このように、鉄は何度でもリサイクルできる素材です。実際に「1トンの鉄くず」から「ほぼ1トンの新しい鉄」を作ることが可能と言われています。

リサイクルによるエネルギー・環境効果

鉄くずを再利用することで、製鉄の工程に必要なエネルギーとCO₂排出量を大幅に削減できます。

比較項目 1:新規製鉄(鉱石から)  
エネルギー消費量 :100%     
CO₂排出量: 100%     
資源利用: 鉄鉱石・石炭が必要

比較項目 2:鉄くずリサイクル(電炉)
エネルギー消費量 :約30%
CO₂排出量: 約30〜40%
資源利用: 廃棄鉄のみで再生可能

つまり、リサイクルを進めることはエネルギーの節約だけでなく、地球温暖化防止にも直結するのです。
近年では、カーボンニュートラルの流れの中で「グリーンスチール(低炭素鉄)」として注目されています。

現場で感じた課題と注意点

実際に設計現場で感じた課題のひとつは、リサイクル意識の温度差です。
「鉄くずは廃棄物」という固定観念が強く、リサイクル業者との連携が後回しになりがちでした。

また、銅線やステンレスなどの高価な金属は不法な持ち出しや窃盗の対象になるケースもあり、管理体制の強化が求められます。
正規ルートでの回収・処理を徹底することが、リサイクルの健全な発展には欠かせません。

鉄くずリサイクルのこれから

現在、鉄くずリサイクルは「産業廃棄物の処理」から「資源循環の一環」へと大きく転換しています。
AIによる自動分別機の導入や、磁力・光学センサーを使った素材判別など、技術の進化も進んでいます。

さらに、SDGsの観点からも「再資源化」「CO₂削減」「省エネ」は企業活動の重要指標です。
ものづくりに関わる者として、こうした流れを理解し、自社の生産活動にどのように取り入れられるかを考えることが求められます。

まとめ|鉄くずは“未来の資源”

鉄くずは再利用率が高く、エネルギー消費とCO₂排出を大幅に削減できる

日本では法制度により、金属リサイクルの仕組みが確立している

現場レベルでは、分別や管理体制の強化が今後の課題

鉄リサイクルは、省エネ・循環型社会の実現に不可欠な取り組み

私自身も、廃棄物だと思っていた鉄くずが「何度でも生まれ変われる資源」であることを知り、考え方が変わりました。
日常や仕事の中でも、資源を「使い捨て」ではなく「循環させる」という意識を持つことが、持続可能な社会への第一歩になると思います。

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