測定器の基礎知識
前職の仕事の機構設計で使用していた測定器の基礎知識を3分間スピーチ用の資料にまとめてみました。
項目は多く内容が多くなりますがモノづくりにおいての計測器の基礎になりますので記載しました。
スピーチするのに長いと感じた人は興味のある項目を抜粋して参考にしてください。
文献で読むとそれこそ大量の文字数になりますが、短くコンパクトにまとめたつもりですので興味のある人は御覧ください。
1.測定とは
当サイトで用いる「測定」とは、製造物の寸法を一定の基準(単位)に基づいて数値で表すことを意味します。端的に言えば、寸法の測定は測定したい対象物を基準物と比べることです。基準物となる測定機器は、測定の目的や方法、精度に応じて多種多様なものがそろっています。寸法を正しく測定することによって、製造物が求められる仕様(許容値)に当てはまっているかどうかを「検査」することが可能となります。つまり、測定を極めることは、より良い物づくりの基本にほかなりません。
モノづくりにおける測定の重要性
言うまでもなく、正しい寸法測定は物づくりの原点です。材料の調達から加工、組立て、検品、出荷に至るまで、各工程で同一の基準で測定を行うことで、製品を設計通りに作ることができ、品質を保証することができます。もし、だれか一人でも測定をおろそかにすると、品質を保つことができなくなります。それによって不良品が混入した場合、歩留まりの悪化につながる上、そのまま完成品として納入された場合、クレームの発生となります。つまり、物づくりのすべての過程において、組織全体のメンバーが正しい測定を行うことが欠かせません。正しい測定の基本は、物づくりに携わる人々が測定に対する技術を持つことであり、その上で測定機を正しく管理、使用することにあります。これらは「計測管理」と呼ばれる取り組みであり、品質管理の土台となるものです。近年、計測管理は計測マネジメントシステム(ISO10012)として規格化されています。また、正しい測定を保証するため、計量トレーサビリティの取り組みが進んでいます。
2-1.直接測定
ノギスやマイクロメータ、三次元測定器などの測定機器を用いて対象物の寸法を直接、測る方法です。絶対測定ともいわれます。
2-2.間接測定
測りたい対象物の寸法に関係のある別の測定結果を用いて計算する方法です。例として、一定の速度で物体を動かした通過時間を測定し、そこから長さを計算する方法などがあります。
2-3.比較測定
ゲージブロックやリングゲージなどの基準器を用いて、それと対象物の差から寸法をダイヤルゲージなどの計測器で割り出す方法です。基準器の形状や寸法が決まっている分、測定が容易である一方、測定範囲が限られるデメリットがあります。
3.長さの単位の歴史
(1)人体基準
その昔、基準となったのは人体で、例えば古代のメソポタミアやエジプト、ローマなどでは、腕のひじ部分から指先までを1キュビットという単位で表していました。人体基準の長さの単位は数千年にわたって使用し続けられてきました。
(2)地球基準大きく変わったのは200年ぐらい前のことです。大航海時代を経て西欧を中心に工業が盛んになるにつれて、長さの基準を世界規模で統一する必要が生じてきました。単位を統一する議論は17世紀にヨーロッパで起こり、1世紀以上の議論を重ねた後、1791年になってフランスがメートル(ギリシャ語で「測る」の意味)という単位を提唱しました。そのときに基準となったのが、地球の北極から赤道までの子午線の距離で、それの1千万分の1を1メートルとしました。19世紀末になって、世界規模で寸法の基準をそろえる必要から、酸化や摩滅の少ない白金イリジウム合金を用いたメートル原器がフランスで作成されました。
(3)光速基準
地球基準の単位は当初から測量の難しさが指摘されたほか、メートル原器から、1960年にクリプトン86元素が真空中で放つ橙色の波長をもとに1メートルの長さが規定されました。1983年になって、レーザー技術の進歩を踏まえて、光の速さと時間をもとに1メートルが決められたのです。この時の「1秒の299,792,458分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」が今日の1メートルの定義となっている
4.誤差の種類
長さの誤差は、対象物の真実の値(真値)と測定値の差、または指定した値と測定値の差であり、「誤差=測定値−真の値」で表されます。現実にはどんなに精密に測定しても真の値を求めるのは困難で、測定値には何らかの「不確かさ(あいまいさ)」が含まられるのは避けられません
(1)系統誤差
特定の原因によって測定値が偏る誤差。例えば、測定器の個体差による誤差(器差)、温度、測定方法のくせなど。
(2)偶然誤差
測定時の偶然がもたらす誤差。測定器に付着したほこりが原因の誤差などが挙げられます。
(3)過失誤差
測定者の経験不足や誤操作による誤差のこと。
5.誤差の要因
(1)温度による誤差
物体は温度の変化によって体積が変わることから、長さもまた変化します。これは測定の対象物と測定機器の両方にいえることです。温度と物体の長さの変化は「熱膨張係数」で表すことができます。材質の種類によって熱膨張係数は異なります。なお、JISは長さを測定する際の標準温度を20°Cと決めています
(2)物質の変形による誤差
物体は力を加えることで一定の割合で変化します。また、力を加えるのを止めると元の状態に戻ります。物体のこうした変化を「弾性変形」といいます。物体に作用する力を「応力」といい、物体のひずみとは一般的に比例関係にあることから、両者の関係を「縦弾性係数(ヤング率)」で表すことができます。応力が強くなる分、ひずみも大きくなることから、たとえば外側マイクロメータで計る時は、スピンドルを締めすぎないように注意する必要があります
6.アッベの原理
アッベの原理は、寸法を測定する際の精度に関わる原理です。
測定機器を設計する上で重要な指針となります。その原理とは、「測定精度を高めるためには、測定対象物と測定器具の目盛を測定方向の同一線上に配置しなければならない」というものです。
⒎公差とは
許容される誤差の範囲を明らかにすることです。
測定の分野では、許容誤差の最大寸法と最小寸法の差を「公差」もしくは「許し代(ゆるししろ)」と呼んでいます。
工業規格などの法律が認める誤差の範囲についても公差と呼びます。
JISにて規定されている許容公差は「普通公差」といいます。加工の精度によって、精級(f)、中級(m)、粗級(c)、極粗級(v)と許容差が定められています。企業によっては普通公差を独自に規定しているところがあります。
8.はめあいとは?
公差を設定するもう一つの理由として、軸と穴のように複数の部品を組み合わせる際の寸法差を定める必要があります。これを「はめあい」もしくは「嵌合(かんごう)」と呼びます。はめあいの公差もまたJISで規定されています。図面の指示をもとにJISの「はめあい公差表」と照らし合わせて、加工を行う必要があります。
はめあいを検討する場合、軸を基準とするか、穴を基準とするかで測定の考え方が変わってきます。たとえば、軸の直径を基準として考える際、軸が穴を貫通すればよいという場合は「すきまばめ」とし、穴に軸を差し込んだら固定する場合は「しまりばめ」、両者の中間の基準であれば「中間ばめ」とします。
9.アナログとデジタル
近年、測定機器のデジタル化が進んでいます。たとえば、デジタルカウンターのついたノギスやマイクロメータは珍しくありません。かつてはノギスのバーニアスケールの目盛りを正確に読むのに練習が必要でしたが、デジタル式のものは100分の1の単位まで瞬時に数字を表示します。
もっとも、デジタル式の測定機器がメリットばかりかというと、必ずしもそうではありません。デジタルの場合、限界精度を超えた値については、測定時の力の入れ加減で表示が頻繁に変わることがあります。特に1000分の1まで計測が可能なデジタル式の測定機器は、測定対象によっては測定値が定まらず、どの値を選択すべきか迷いかねません。また、作業の内容によっては、アナログ式の方が寸法を直感的に把握しやすいということもあります。用途や求める精度に応じて、アナログとデジタルを使い分けることが必要といえるでしょう。
10.計量トレーサビリティ
製品のトレーサビリティが、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにするのに対し、計量トレーサビリティでは「その測定器が、どのような標準器で校正されたのか」を明らかにします。「計量トレーサビリティ」とは、一般的に「測定結果が、国際または国家標準のような適切な標準に対して切れ目のない比較の連鎖によって関連付けられる」ことです。つまり、現場での測定結果が国家標準に沿っていることを意味します。ここでは、このような計量トレーサビリティの必要性と仕組み、さらに計量トレーサビリティの証明に必要な手続きと書類について説明します。
計量トレーサビリティの目的
経済活動のグローバル化に伴い、世界各地で製造した部品を購入して製品を製造する場合、測定器の精度の基準が不統一では製品の品質が安定しません。そこで、基準をどこかに決めて統一的に管理することで、出所の異なる部品でも一定の品質であることを証明し、部品調達の効率を図ることを目的として導入された考え方が計量トレーサビリティです。
まとめ
現代はデジタルの時代でスマートフォンやタレットPCで文字をペーパーレスで見たり紙の図面ではなくデータを元に3Dプリンタで3次元の形を作っていますが、
その3Dプリンタで作った物も測定器で測ってようやく、品質の良い物が出来ているか確認が出来ます。
そういう出来あがった物の仕上がりを確認するツールとして測定器はこの時代でも大切な機器といえます。
このブログまでたどり着いた方は少なくてもモノづくりに興味がある方と思います。これからもモノづくり関する事で知ってる事、私が知らなくても
機械関係の資料はJISとか文献が豊富にありますので、モノづくり関係の情報発信をしていきたいと思います。
私が詳しく知っていなくても情報の探し方は教えられると思いますので、問い合わせありましたら連絡ください。